ボーダーを乗り越え、社会変革に伴走する「飲料ブランド」へ──チェリオコーポレーション代表・菅大介が語る「超生命体飲料ライフガード」の歴史と未来

35年間変わらない「超生命体飲料」というコンセプト

──このたび、「ライフガードスクエア−超生命体広場−」がオープンになりました。エナジードリンクの先駆けとして「超生命体飲料ライフガード」は日本全国で愛されてきたブランドだと思います。改めて、ライフガードの歴史からお伺いしてもよいでしょうか?

菅大介:わたしたちチェリオコーポレーションの歴史を振り返ると、1960年代初頭に瓶の「チェリオ」を、82年に「スイートキッス」を発売しました。そして、86年に発売となったのが今回広場を通じて皆さんにブランドコンセプトを提案する「超生命体飲料ライフガード」です。

その際に大切にしていたのは、「棚の中で一番目立つパッケージをつくること」。当時、わたしの父で先代の社長である菅春貴がスペインに旅行した際に、現地の若者が迷彩の洋服を着ているのをみて「カモフラージュすることがファッションに取り入れられていること」に目をつけたんです。そこで、逆説的ではありますが、棚のなかで目立つように迷彩のパッケージの「超生命体飲料ライフガード」をデザインしました。

また、当初飲料のパッケージとしては250ml缶が主流の中、「アメリカンビッグサイズ」と冠した350ml缶を値段は上げずに同じ価格で発売し、ライフガードでも採用することで差別化を図りました。その後もさらに500ml缶、500mlのペットボトルを競合に先んじて市場に提案するなど、パッケージを通して日本のなかで新しい価値をつくることを続けてきました。

──パッケージにはそんなバックストーリーがあったんですね。「超生命体飲料」というコンセプトも印象的ですよね。

はい。86年にライフガードが誕生したときに「超生命体飲料」というコンセプトも生まれています。わたしは2020年に社長に就任したのですが、その際に先代の社長から7つのアドバイスをもらいました。

その一つに、「好奇心をもって一生懸命生きろ」という言葉があります。「ライフガードをどうやってつくったのかを多くの人に聞かれるけれど、それは説明できない。その試行錯誤が自分の人生そのもの。だからこそ、お前も好奇心をもって一生懸命生きろ」と言われたのです。その後も「生命を超える」とはどういうことかを考えながら、「ライフガード」という飲料の定義を試みましたが、頭と言葉だけでは、なかなか説明が追いつきません。

人々の境界がなくなることをサポートする

──面白いです。ライフガードのこの35年間の歩みとは、どのようなものなのでしょう?

そうですね。重要な点が2つあると思っています。「ボーダーの超越」と「試行錯誤」です。先代の現会長は世界中のさまざまな分野のカルチャーにインスピレーションを受け、カルチャー間のボーダーを超越し、ライフガードというひとつの製品に落とし込みました。そして、1986年の発売以来35年間ずっと試行錯誤してきたものの現在形がいまの製品になっています。

──そうした思想を菅さんも引き継いでいるのでしょうか?

「ボーダーの超越」という点で自分が影響を受けたのが、スタンフォード大学でのスティーヴ・ジョブズの有名なスピーチです。過去の経験が、その当時は思いもよらなかったことに活かせる状況のことをジョブズは「Connecting The Dots」と表現したわけですよね。将来のある時点から振り返ればつながるものの、いまの段階ではそれはわからない。だからこそ、ドット同士がつながることを信じて一生懸命取り組むことが大事だと信じています。

「ライフガードスクエア」も、人々がボーダーを越えて出会うことで面白いコラボレーションが生まれたり、思ってもみなかったところで価値が生まれたり、そうした新結合のための仕掛けをつくっていきたい。

常設の広場として残り続けるわけではなくても、そこで出会った人々が振り返ったときに「ライフガードスクエアが重要なドットだったよね」と語り継いでもらえる出会いの場として、人々の記憶に残っていくと面白いかなと思います。

──ボーダーを超えるという点では、主要な協賛企業がすべて外資企業のなかで日本企業としてはじめて「東京レインボープライド」に協賛したことも話題になりました。

2014年から毎年、協賛をしています。人と人の間に信頼関係が醸成されていくうえで、「自分は何者か」というアイデンティティを表明できることや、パートナーシップの選択を尊重することが重要だと思っています。

チェリオコーポレーションとしても、LGBTQの「アライ企業」として活動しています。いまでは、グループ全体で約560人いる社員の9割が「LGBTQとは何か」を理解していますし、2019年度は東京レインボープライドを含む全国のプライドパレードで当時の社員の4割にあたる約200人が歩きました。

協賛を始めた経緯については、「TOKYO RAINBOW PRIDE」や『クーリエ・ジャポン』のインタビューで話していますが、東京レインボープライド以外においても、機会をいただいた日本各地のプライドイベントに協賛し、チェリオグループ全体の社員が全国のプライドパレードで行進しています。

また、LGBTQに対するサポートを表明するためのオリジナル自動販売機「のんでCHANGE!」を、「飲んでチェンジ、置いてチェンジ、歩いてチェンジ」というコンセプトで全国各地に設置し始めています。

その利益の一部をLGBTQ団体の支援にあてているため、飲料を買うことが社会変革をサポートするひとつのアクションにつながっています。アライの企業や団体も、この自動販売機を敷地に置くことで、LGBTQを応援していると表明でき、お客様に社会変革に参画する機会を提供できるわけです。

情報量の多い都市圏では価値観が相対的にアップデートされやすい一方で、地方においては多様性の価値観の推進に時間がかかります。そうした地域に暮らしていたり、故郷があったりするLGBTQの人たちが安心できる時間や場所をつくれるよう、地域に根ざした企業として、「のんでCHANGE!」の取り組みを通じた価値観のアップデートを推進していきたいと考えています。

社会変革に伴走する飲料ブランドへ

──ライフガードの歩みという話に戻すと、2012年にコーポレートスローガンを変えていますよね。

はい。「CHANGE IT FOR チェリオ」から「CHANGE WITH チェリオ」に変更しました。東日本大震災があり、飲料会社としてだけではなく、個々人が社会のために何ができるのかを考えることの重要性を痛感していたときに、チェリオの社会の中での存在意義を見直しました。そこで、社内でも議論を重ね、チェリオが社会変革を起こす人々のパートナーになっていくようなメッセージを打ち出しました。

たとえば、チェリオって中高生が学校の部活帰りに飲んだりする飲料で、その頃はみんな目がキラキラして好奇心に溢れた日々を送っていたと思うんです。そんな10代の頃の情熱を思い出させてくれるのがチェリオだと捉えていますし、チェリオやライフガードがその頃の「未来が楽しみ」という心のワクワク感や情熱を呼び起こしてくれるスイッチになればと思っています。

だから、10代の頃だけではなく、あらゆる世代の人々にとって、これから新しい道に進んだり、人生でチャレンジしたりするときに、その人を励ましてくれる飲み物であってほしい。チェリオというブランドはそうした人々に伴走するパートナーでありたいと思っています。

先ほどの「東京レインボープライド」への協賛も、「CHANGE WITH チェリオ」の実践例のひとつなんです。日本で登記されている企業は約200万社。そのうち約7割がチェリオと同じ家族経営の中小企業です。ボーダーを超えて皆が協力し、チェリオがつくる変化が他の企業の参考になれば、一人でも多くの人々が自分の居場所を感じながら活躍し、日本を変える大きな力を生むことに少しでも貢献できるのではないか。今後もチェリオは、「超生命体」でとても元気な飲料ブランドとして、事業活動を起点に人々の価値観に働きかけていきたいと思います。

(記事後編に続く)